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神奈川県 INDEX
保存された大壁画。煉瓦へのこだわり。
その佇まいは地霊が配慮されない現状を憂い、静かに警鐘を鳴らす。
DATA
■設計:内藤廣建築設計事務所+鉄道建設・運輸施設整備支援機構鉄道建設本部東京支社
■所在地:神奈川県横浜市中区本町
■用途:駅
■竣工:2004年(平成16年)
■敷地面積:7172m2 建築面積:220m2 延床面積:10313m2(申請部分)13626m2(申請外含む)
■構造:RC造,一部S造 地上1階地下3階
付近の地図(mapion)
まず目に飛び込んでくるのは、内壁を形成している煉瓦だ。やはりコンクリート壁に溝を刻んだだけの”なんちゃって煉瓦”とは風合いがまるで違う。建築家の言葉を引用すると…
映画「フェリーニのローマ」の冒頭、何かの地下工事がローマの遺跡に行き当たる場面があるが、それにつながるイメージがあった。そのためには、しっかりとした壁がなければならず、コンクリートの外殻の内側に、貼りものでない量感のある無垢のレンガを積んだ。地下水に対して備える必要のない内部の柱などは、すべて剥き出しにした。

内藤廣「長い時間と向き合う都市の駅」 雑誌『新建築』2004年1月号pp105 より引用

もう一つ注目されるのは、駅の真上に建っていた横浜銀行旧本店(1)から金庫扉や壁画を譲り受け、吹き抜けに取り付けている(photo#2, #3)という点だ。地霊への配慮は高く評価したいが、地上にあった地霊が大きく損なわれた現実は変わらない。地霊への配慮に欠ける開発思想に対し、この空間は地下から静かに警鐘を鳴らしている。

全体的にはシンプルなデザインとなっており、建築家自らが作家性を意図的に抑えたように感じられる。再度引用すると…
10年から20年という時間に、内容が耐えられるものでなくてはならない。さらには、都市施設なのだから、実際に供用されるその先の長い時間にも耐えねばならない。
内藤廣「長い時間と向き合う都市の駅」 雑誌『新建築』2004年1月号pp105 より引用

多くの人の目に触れる空間では作家性を自制し、土地の記憶(流行り廃りを超えた評価が確定しているもの)を残すことに力を傾ける。これが公共空間デザインに臨む建築家の正しい姿勢だと思う。
みなとみらい線 馬車道駅
Bashamichi Station
歴史的建造物が比較的残っている(次々に消えているが…)馬車道の真下に建設された駅。他の駅と同様、建築家が呼ばれた時点では既にドーム空間(photo#1)も吹き抜けの配置も何もかも決まっており、基本的に彼らにはディテールのデザインが求められていた。

#1:改札はドーム空間のただ中に設けられている。

#2:横浜銀行から譲り受けた金庫扉を取り付け、土地の記憶を少しでも残そうとしている。煉瓦の質感にも注目。

 #3:こちらも横浜銀行から譲り受けた壁画(中村順平 作)

#4:ホーム階。ここでも壁面にはこだわりの煉瓦が。

 #5:馬車道。ファサード保存やアーバンデザインなどでは全国的に知られた先進地だが、それでも十分とは思えない。
みなとみらい線
横浜−新高島みなとみらい馬車道−日本大通り−元町・中華街

[補注]
(1) 既にファサードを残して解体されている。

[参考文献・サイト]
1) 「みなとみらい線の駅」 雑誌『新建築』2004年1月号, pp100-
2) 横浜高速鉄道ウェブサイト http://mm21railway.co.jp/www/
3) 内藤廣建築設計事務所ウェブサイト http://www.naitoaa.co.jp/

[行き方ガイド]
みなとみらい線は東急東横線と直通運転をしている。特急は馬車道には停車しない(2004年2月時点)ので注意。

作成 :2004/2/22
最終更新 :
作成者 : makoto/arch-hiroshima
使用カメラ : Canon PowerShot G3
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