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高層集合住宅の元祖 |
戦災復興の途上にあったフランスで、国がモデル的に建設した中所得者層向け高層公営住宅はユニテ・ダビタシオン(Unite d' Habitation=居住単位)と命名され、各地に建設された。その中でも第一弾であるマルセイユのもの、つまり本作が最も評価が高いようだ。ル・コルビュジェが5原則(水平連続窓、ピロティ、屋上庭園、自由な平面、自由な立面)やモデュロールを駆使して設計した代表的な事例であり、かつ現代の高層住宅の元祖というべき記念碑的な作品でもある。(以下、本作のことを「ユニテ」とも表記する) |
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マルセイユのユニテ・ダビタシオン Unite d' Habitation |
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階表記について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
最初に階の表記について解説しよう。 欧州では地上レベルは1階ではなく0階と表記する。また、ユニテではエレベーターはおおむね3層ごとに停止し、階表示はEV停止階にあわせて1、2、3…となっている。というわけで、左図のように、ユニテで7階と書かれたフロアは、日本式に数えると17階に相当する。 このページでは、訪問時の利便を考え、現地式(つまり左図のブルーの階表示)で表記する。 |
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ピロティ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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では、順に建物をめぐっていこう。 ユニテにアプローチする際にまず目がいくのがピロティ。広島の平和記念資料館にも似た”足”の造形が印象的だ。周辺の緑地も雰囲気がある。 |
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屋上・事務所階 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
エレベーターで9階に上がると、そのまま屋上に出られる。屋上は庭園として公開されている。…いや、むしろコルビュジェの多様な造形物を鑑賞できる展示場となっている。そこには保育園(閉鎖?)やプールが配され、プールは訪問時も普通に使われていた。パラペットの立ち上がりは大人の頭くらいで、風よけを考慮した高さと思われる。 写真からも伝わると思うが、この空間の豊かさや保存状態の良さは感動的。ちなみに、広島の基町高層アパート(1976)では、大高正人は当初屋上庭園に保育園を設置しようとしたが事情により断念、集会室と花壇になった。さらに当初公開されていた屋上庭園は管理上の都合で閉鎖されてしまう。本作との差は歴然だ。 中間の3〜4階にはオフィスと共用施設が集まっており、カフェや売店がある。ホテルのレセプションを兼ねたカフェには屋外席もあり、ビル内住民の社交場になっているようだ。 現地に行って強く印象に残ったのは木製建具の存在感。一部スチールもあるが、事務所・住戸を問わず窓枠は基本的に木で、さすがに開けにくくなっているものの、経年変化による質感にグッと来る。 |
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住戸 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
#12(Le Corbusierより引用) |
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ユニテの住戸は基本的にメゾネットで両面採光が可能(中にはメゾネットでない住戸もある)、上図のようにL字の住戸ユニットを立体的に組み合わせて構成されており、3層で1セットとなる。 断面図にあるように、この形式だと共用廊下は屋内となり(中廊下式という)、昼間でも照明が欠かせない。本作では、各住戸の玄関に新聞受けと照明をセットで仕込んであり、通路照明を兼ねたデザインとなっている。玄関扉は他ではあまり見たことのないサイズで、おそらくモデュロールの影響だろう。 |
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2階のとある部屋(実際に住人がいる)を見学することができた。メゾネットだが吹き抜けはない。玄関階にはリビング(写真#15)とキッチン(写真#16)があり、内階段で下階に降りると、リビング直下に1部屋(写真#14)と裏側にハーフサイズの部屋(たぶんラ・トゥーレットの個室と同サイズ)が2つ置かれている。多彩で大容量の作り付け収納家具はいかにも女性的な発想で、ル・コルビュジェというよりはシャルロット・ペリアンの功績だろう。 もう一部屋、ホテルとなっていて実際に泊まった8階の部屋(メゾネットではない)が写真#19〜26。近所でワインやチーズを調達してきて、窓をフルオープンにしバルコニーで夕暮れを待つのは、建築ファン(&団地ファン)にとってはまさに至福。 噂どおりの逸品であり、わざわざ見に行くだけの価値はあった。パリから日帰りもできなくはないが、やはり宿泊して、一日だけ住人になってみるのがいいと思う。 |
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フランス INDEX | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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