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フランス INDEX
高層集合住宅の元祖
DATA
■設計: Le Corbusier(Charles-Edouard Janneret) (ル・コルビュジェ)
■所在地: Marseille (マルセイユ)
■用途: 集合住宅
■構造: RC造
■竣工: 1952年
マルセイユの郊外市街地に建つ集合住宅。

戦災復興の途上にあったフランスで、国がモデル的に建設した中所得者層向け高層公営住宅はユニテ・ダビタシオン(Unite d' Habitation=居住単位)と命名され、各地に建設された。その中でも第一弾であるマルセイユのもの、つまり本作が最も評価が高いようだ。ル・コルビュジェが5原則(水平連続窓、ピロティ、屋上庭園、自由な平面、自由な立面)やモデュロールを駆使して設計した代表的な事例であり、かつ現代の高層住宅の元祖というべき記念碑的な作品でもある。(以下、本作のことを「ユニテ」とも表記する)
マルセイユのユニテ・ダビタシオン
Unite d' Habitation
階表記について
最初に階の表記について解説しよう。
欧州では地上レベルは1階ではなく0階と表記する。また、ユニテではエレベーターはおおむね3層ごとに停止し、階表示はEV停止階にあわせて1、2、3…となっている。というわけで、左図のように、ユニテで7階と書かれたフロアは、日本式に数えると17階に相当する。
このページでは、訪問時の利便を考え、現地式(つまり左図のブルーの階表示)で表記する。
ピロティ
では、順に建物をめぐっていこう。
ユニテにアプローチする際にまず目がいくのがピロティ。広島の平和記念資料館にも似た”足”の造形が印象的だ。周辺の緑地も雰囲気がある。
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2:ピロティの造形 3:ピロティは駐輪場になっていた。スリットは構造の切れ目だろう 4:非常階段? 5:西側の外観。オーニングの色はコントロールされているのだろうか? (写真はクリックすると拡大表示します)
屋上・事務所階
エレベーターで9階に上がると、そのまま屋上に出られる。屋上は庭園として公開されている。…いや、むしろコルビュジェの多様な造形物を鑑賞できる展示場となっている。そこには保育園(閉鎖?)やプールが配され、プールは訪問時も普通に使われていた。パラペットの立ち上がりは大人の頭くらいで、風よけを考慮した高さと思われる。
写真からも伝わると思うが、この空間の豊かさや保存状態の良さは感動的。ちなみに、広島の基町高層アパート(1976)では、大高正人は当初屋上庭園に保育園を設置しようとしたが事情により断念、集会室と花壇になった。さらに当初公開されていた屋上庭園は管理上の都合で閉鎖されてしまう。本作との差は歴然だ。

中間の3〜4階にはオフィスと共用施設が集まっており、カフェや売店がある。ホテルのレセプションを兼ねたカフェには屋外席もあり、ビル内住民の社交場になっているようだ。

現地に行って強く印象に残ったのは木製建具の存在感。一部スチールもあるが、事務所・住戸を問わず窓枠は基本的に木で、さすがに開けにくくなっているものの、経年変化による質感にグッと来る。
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6:屋上プールは居住者専用 7:換気塔など 8:極薄の階段は通行禁止になっていた 9:3〜4階は事務所・店舗階で、吹き抜けの共用廊下がある。 10:カフェの屋外席。立ち上がりには落下物防止のための面取りがしてある 11:カフェ室内。ここも木サッシ。どこまでがオリジナルデザインかは不明。 (写真はクリックすると拡大表示します)
住戸

#12(Le Corbusierより引用)
ユニテの住戸は基本的にメゾネットで両面採光が可能(中にはメゾネットでない住戸もある)、上図のようにL字の住戸ユニットを立体的に組み合わせて構成されており、3層で1セットとなる。
断面図にあるように、この形式だと共用廊下は屋内となり(中廊下式という)、昼間でも照明が欠かせない。本作では、各住戸の玄関に新聞受けと照明をセットで仕込んであり、通路照明を兼ねたデザインとなっている。玄関扉は他ではあまり見たことのないサイズで、おそらくモデュロールの影響だろう。
2階のとある部屋(実際に住人がいる)を見学することができた。メゾネットだが吹き抜けはない。玄関階にはリビング(写真#15)とキッチン(写真#16)があり、内階段で下階に降りると、リビング直下に1部屋(写真#14)と裏側にハーフサイズの部屋(たぶんラ・トゥーレットの個室と同サイズ)が2つ置かれている。多彩で大容量の作り付け収納家具はいかにも女性的な発想で、ル・コルビュジェというよりはシャルロット・ペリアンの功績だろう。

もう一部屋、ホテルとなっていて実際に泊まった8階の部屋(メゾネットではない)が写真#19〜26。近所でワインやチーズを調達してきて、窓をフルオープンにしバルコニーで夕暮れを待つのは、建築ファン(&団地ファン)にとってはまさに至福。


噂どおりの逸品であり、わざわざ見に行くだけの価値はあった。パリから日帰りもできなくはないが、やはり宿泊して、一日だけ住人になってみるのがいいと思う。
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13:共用廊下 14:メゾネット下階の寝室。窓下のでっぱりには暖房が仕込まれている 15:メゾネット上階のリビング 16:ペリアンによるオリジナル家具が今なお現役だ 17:内階段は木製 18:収納は意外に充実している 19-26:泊まった部屋 (写真はクリックすると拡大表示します)

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[行き方ガイド]
(1) マルセイユ・サンシャルル駅(Saint Charles)から行く場合
サンシャルル駅からメトロ2号線に乗車し、Rond Point du Prado駅で下車。駅前から21号線または22号線のバス(Luminy方面行き)に乗り、Le Corbusierバス停で下車、徒歩1分。駅から歩けなくもないがバスを使った方が楽。
(2) 旧港から行く場合
旧港から少しサンシャルル駅側に行ったあたりに、ショッピングセンターや高層住宅を併設したバスターミナルCanebiere Bourseがある。そこから21号線のバス(Luminy方面行き)に乗車しLe Corbusierバス停で下車、徒歩1分。

■地下鉄(METRO)とバスの切符は共通なので、両者を1時間以内に乗り継ぐ場合は1枚の切符でOK。切符は距離に関係なく1.5ユーロで、地下鉄の券売機やバス運転手から買う(おつりもくれる)。バス路線は複雑なので、事前にRTMのウェブサイトで路線図をダウンロードして印刷しておくとよい。なお、バスの車内アナウンスはないので、外をよく見て目的地に近づいたら降車ボタンを押す。バス車内は決して安全ではないのでスリに注意すること。
■地下鉄からの乗り継ぎでなくバスだけで現地に行く場合は、運転手から切符を買うことになる。ただ買うだけでは切符は有効になってないので、必ず入口近くの刻印機に差し込んで使用開始の刻印をすること。

[お役立ち情報] 2012年9月時点
■マルセイユ市内の治安は改善されつつあるが、夜間早朝の一人歩きは避けたほうがよい。移民の多い郊外住宅地やサンシャルル駅周辺はできるだけ避ける。ユニテ周辺は比較的安全であり、昼間なら外観撮影するのに不安はない。
■ユニテの館内共用部(共用廊下、ロビー、屋上など)は日中なら自由に入れるし撮影もできる。
■ユニテの一部はホテル(Hotel Le Corbusier)になっている。若干高めだがぜひ宿泊することをすすめる。メゾネットの部屋に泊まれるかは不明。また、アメニティはタオルと石鹸くらいしかないので、歯ブラシ等は持参すること。3階に一応カフェはあるが、周辺は普通の住宅地なので飲食店は少ない。ホテル室内での飲食は許可されているが、屋上などの共用部での飲食はNG。室内のキッチンで調理するのもおそらくNG。室内に冷蔵庫はない。
■ここに掲載したように、実際に住まわれているアパートの部屋を見学できる。ホテルのレセプション(3階)で「I'd like to visit an apartment house.」のように言えば手配してくれる。英語はおおむね通じる。お礼として1人5ユーロを直接住人に払う。あくまで住人が個人的に見せてくれるものなので、たまたま部屋に居なければ見学できないし、いつまで公開が続くかも不明。室内はだいたい全部見せてくれたが一部立入禁止部分もあった。
作成:2012/10/8 最終更新:2012/10/8 撮影:2012/9/12
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:Nikon D90
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