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神奈川県 INDEX
鉄とガラスの郊外型美術館
DATA
■設計:山本理顕設計工場
■所在地:神奈川県横須賀市鴨居4-1
■用途:美術館
■竣工:2006年(平成18年)
■規模:敷地面積22000m2、建築面積4234.42m2、延床面積12095.15m2
■構造:RC + S
■付近の地図(mapion)

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三浦半島の突端、観音崎公園に建つ美術館。ボリュームの半分程度は地中に埋められ、地上部はガラスと鉄による軽い建築となっている。曲げやすく自由な開口部をとれる鉄を内壁に使い、全体を包み込むようにガラスの外壁が巡らされ、ダブルスキンを形成する。外壁のガラスは外光を取り込み見た目に軽く見せるだけでなく、潮風から建物と美術品を守るバリアともなっている。

芝生広場に面する部分にはワークショップ室、ミュージアムショップ、レストランなどの諸室が配置されている。ただ、美術館のエントランスにアプローチする動線上にレストランがあるため、視線を気にしながら食事せざるを得ない。”滞在型美術館”を謳うのにこのミスは痛い。(写真#5)

内観撮影禁止なので内部写真はないが、鉄という素材を活かした柔らかな内部空間は、(少なくとも建築ファンであれば)楽しめると思う。
全体としては今どきの美術館建築として十分鑑賞できるレベル。車で行く人が多いと思うけども、ぜひ横須賀から船で行くことをすすめたい。

横須賀美術館
Yokosuka Museum of Art

#1:正面。建物手前には芝生広場が配置されている。 (拡大

#2:手前から、ワークショップ室、ミュージアムショップ、エントランス、レストランの順に並んでいる。

#3

#4:ダブルスキン

#5:動線と店舗が交錯

#6:薄っ!

#7:屋上広場からは海を一望できる。
都市経営の視点から感じたこと
建築はまぁいいとして、このプロジェクトを都市プランナー的視点で見ると「これでほんまに大丈夫かいな?」と心配になる。
今どきの公立美術館は(事業収支上はどうしても赤字になるため)、地域活性化へのシナジーに存在意義を見いだしている。つまり良質な美術鑑賞の機会を市民に与えるだけでなく、それをきっかけに市民活動が活性化する、観光客が増えて地域が潤うといった効果が求められる。最近の事例で有名なのは「金沢21世紀美術館」で、都市のど真ん中に建てることで、本体が赤字でも中心市街地が潤うモデルを構築した。しかし、この美術館は中心市街地から距離があるため、市民がふらっと立ち寄ることはほぼ不可能だし、周辺に店舗も少ないので潤いようがない。
いや、中心市街地は関係ない、この眺望で人を呼ぶんだ、というのかもしれないが、残念ながら世界有数の絶景ではないので、これだけでは求心力を保てない。直島のような宿泊型美術館なら何とかなるかもしれないが、公立ではそうもいくまい。もちろん、力のあるキュレーターを起用し、本業であるアートの企画力で勝負する方法もあるが、(少なくとも訪問時の企画からは)そういう印象は受けなかった。やはり根底の経営戦略が不十分な気がする。
一つ活路を探すとすれば、海上ルートを活用した他地区との連携だろう。例えば横須賀軍港・猿島・海堡とまとめてツアー化するとか、東京湾クルーズ船が立ち寄るとか、まだ開拓の余地があると思う。
[参考文献・サイト]
1) 横須賀美術館ウェブサイト http://www.yokosuka-moa.jp/
2) 雑誌 新建築2007年7月号

[行き方ガイド]
バスの場合: 京急「浦賀」駅前から、観音崎行きバスに乗車し「観音崎」で下車、徒歩7分。浦賀駅前からは美術館直行バスも出ている。
自家用車の場合: 敷地内の駐車場を利用可能。
船の場合: 横須賀の三笠公園から猿島経由で観音崎に向かう連絡船が運行されている。観音崎の桟橋から美術館までは徒歩3分。(※事前に運行状況について確認すること)
作成:2007/10/20 最終更新:2007/10/20
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:Nikon D70
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