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鉄とガラスの郊外型美術館 |
三浦半島の突端、観音崎公園に建つ美術館。ボリュームの半分程度は地中に埋められ、地上部はガラスと鉄による軽い建築となっている。曲げやすく自由な開口部をとれる鉄を内壁に使い、全体を包み込むようにガラスの外壁が巡らされ、ダブルスキンを形成する。外壁のガラスは外光を取り込み見た目に軽く見せるだけでなく、潮風から建物と美術品を守るバリアともなっている。 芝生広場に面する部分にはワークショップ室、ミュージアムショップ、レストランなどの諸室が配置されている。ただ、美術館のエントランスにアプローチする動線上にレストランがあるため、視線を気にしながら食事せざるを得ない。”滞在型美術館”を謳うのにこのミスは痛い。(写真#5) 内観撮影禁止なので内部写真はないが、鉄という素材を活かした柔らかな内部空間は、(少なくとも建築ファンであれば)楽しめると思う。 全体としては今どきの美術館建築として十分鑑賞できるレベル。車で行く人が多いと思うけども、ぜひ横須賀から船で行くことをすすめたい。 |
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横須賀美術館 Yokosuka Museum of Art |
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![]() #1:正面。建物手前には芝生広場が配置されている。 (拡大) |
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![]() #2:手前から、ワークショップ室、ミュージアムショップ、エントランス、レストランの順に並んでいる。 |
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都市経営の視点から感じたこと 建築はまぁいいとして、このプロジェクトを都市プランナー的視点で見ると「これでほんまに大丈夫かいな?」と心配になる。 今どきの公立美術館は(事業収支上はどうしても赤字になるため)、地域活性化へのシナジーに存在意義を見いだしている。つまり良質な美術鑑賞の機会を市民に与えるだけでなく、それをきっかけに市民活動が活性化する、観光客が増えて地域が潤うといった効果が求められる。最近の事例で有名なのは「金沢21世紀美術館」で、都市のど真ん中に建てることで、本体が赤字でも中心市街地が潤うモデルを構築した。しかし、この美術館は中心市街地から距離があるため、市民がふらっと立ち寄ることはほぼ不可能だし、周辺に店舗も少ないので潤いようがない。 いや、中心市街地は関係ない、この眺望で人を呼ぶんだ、というのかもしれないが、残念ながら世界有数の絶景ではないので、これだけでは求心力を保てない。直島のような宿泊型美術館なら何とかなるかもしれないが、公立ではそうもいくまい。もちろん、力のあるキュレーターを起用し、本業であるアートの企画力で勝負する方法もあるが、(少なくとも訪問時の企画からは)そういう印象は受けなかった。やはり根底の経営戦略が不十分な気がする。 一つ活路を探すとすれば、海上ルートを活用した他地区との連携だろう。例えば横須賀軍港・猿島・海堡とまとめてツアー化するとか、東京湾クルーズ船が立ち寄るとか、まだ開拓の余地があると思う。 |
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[参考文献・サイト] 1) 横須賀美術館ウェブサイト http://www.yokosuka-moa.jp/ 2) 雑誌 新建築2007年7月号 [行き方ガイド]
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