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神奈川県 INDEX
細部の完成度、納まりはお見事。
ただしこの造形が最適解か否かは議論の余地がありそうだ。
DATA
■設計:安田幸一 / 日建設計
■施工:竹中工務店
■所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
■用途:美術館
■竣工:2002年(平成14年)
■敷地面積:120,021m2 建築面積:3,389m2 延床面積:8,098m2
■構造:S造、一部SRC造地上2階地下3階
■階高(mm):4,900(B3F)、5,250(B2F)、5,000(B1F,1F)、5,200(2F)
■付近の地図(mapion)
■関連ページ:「建築マップ ポーラ美術館」(K.Ohnoさん制作)
■おまけページ:「建築マップ 小田急ロマンスカーVSE」


ZOOMマークのついた写真は、クリックすると拡大表示します。
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訪問者がブリッジ(写真#4)を渡りエントランス(写真#7)を通り抜け2階から1階に下りる(写真#10,#11)とチケット売場がある。さらに地下1階に下り、カフェ(写真#15,#16)を横目にまず企画展示室を見る(写真#17)。企画展示室を抜けると再びエスカレーターの前に出、今度は地下2階の常設展示室を見ることになる。

このあたりの動線は極めて自然で、かつ来訪者の意思で自由にショートカットしたり、鑑賞の途中でカフェを利用することもできる。十字を描く平面の中央に吹き抜け空間を置いた構成は適切だと思う。

ディテールの納め方はお見事。破綻しそうなところを一つ一つ潰していった跡が見て取れる。業界をリードする大手組織事務所の面目躍如といったところだろう。





さて、写真を見れば分かるように吹き抜け空間の真ん中には細い鉄の柱がポツポツと並んでいる。免震にS造ということは設計の自由度は高いはずで、この柱を無くする工夫ができなかったのかなぁと感じた。わざわざ柱を立て、境界を無理矢理納めてまで(写真#23)支える天井の造形には議論の余地があるだろう。吹き抜けを見通したときの視覚効果(写真#13)を狙ったのだろうか? 少なくとも私はこのせめぎ合いってやつ(写真#22)の必要性をイマイチ感じない。例えば建築家の造形物の代わりに周囲の自然をより感じさせる装置とするなど、他の解もあったはずだ(1)
この吹き抜け空間の評価は恐らく人によって違うはずで、この空間が最高に心地よいという人も勿論いるだろうと思う。

むしろこの建築で私が最も違和感を覚えたのは展示室だ(展示室内は撮影禁止なので写真はありません)。
建築雑誌では波打つプレコン(2)の天井と光ファイバーを用いた照明機器が紹介されている。が、少なくとも私の印象では、洗濯板のように波打つコンクリートの天井は美術鑑賞する際どうしても気になる目障りな存在に思えた。照明の拡散効果についても疑問符。天井全体に照明を仕込んで面光源とするか、あるいは天井を白く塗っておけばそれで良かったのでは? 光ファイバーを使った照明機器については、確かに美術品の近くで熱を放つハロゲンランプを使うことはできないから採用したというのは理解できるものの、点光源であるため額縁の影が絵に落ちてしまっているのはどうかと思う(Ohnoさんのページでも同様のことが書かれています)。光源を複数にするとか、やはり天井の面光源で照度を確保するとか、もう一工夫できたのではないだろうか。
他にも、絵に写り込みが見られるなど、そもそも美術品を真っ当に鑑賞させる気があるのか疑いたくなる部分もあった。(これは設計上の問題ではないが…)

展示内容は、観光にやって来たおばちゃん集団が最も好ましいと思えるようになっており、印象派の”ステキな”絵が並んでいる。都会ではなくて観光地の美術館だから経営的にはこうせざるを得ないのだろうと思う。

「これはどうよ?」と思う箇所はあるものの、建築としての見応えは十分。箱根観光の際には外せないスポットといえる。
ポーラ美術館
POLA Museum of Art
箱根・仙石原の山中に建つ美術館。斜面に直径74mの円形の壕を掘り、免震ゴムを介して建物を入れ込む形にしている。そのためヴォリュームはほぼ地中に隠れている(写真#2)。壕を円形としたのは地下水脈への影響を最小化し、同時に土圧に合理的に対抗するためであるらしい。

#1:ドア(写真#7)をくぐり吹き抜けに出る直前の空間。ここからエスカレーターで1階に下っていく。(写真#9,#10も参照のこと)

#2:円形壕を挟んで建物と大地が分離されている様子がよく分かる。左から伸びているのはエントランスにアプローチするためのブリッジ(写真#4を参照)。

#3

#4:アプローチのブリッジ

 #5

#6:ブリッジのディテール

 #7:エントランス

 #8:エントランス(夜)

 #9:エントランス空間のディテール

#10:1階に下りる

#11:1階

#12:1階(夜)

#13:吹き抜け空間

#14:吹き抜け空間(夜)

 #15:地下1階のカフェ

#16

#17:地下1階。左端は企画展示室の入口

#18

#19

#20:地下2階から見上げる。

 #21:展示室の壁。

 #22:このせめぎあいはどう見れば…?

 #23:やっぱりしっくりこないなぁ。

#24:美術館前のバス停や歩道、手すりまで良くデザインされている。
[補注]
(1) 今回利用してないため何とも言えないが、建物内のレストランが自然を感じさせる装置としての役割を担っているようだ。
(2) プレキャスト・コンクリート。 現場で木枠を作りセメントを流し込んで固めるのではなく、予め工場でコンクリートのパネルを作っておいて建物に取り付ける手法のこと。同じパターンのパネルを大量に使えばコストを下げられ、またこの事例では環境への配慮から現場作業を減らす目的もあり、プレコンが採用されている。

[参考文献・サイト]
1) ポーラ美術館ウェブサイト http://www.polamuseum.or.jp/
2) 雑誌「新建築」2002年8月号

[行き方ガイド]
箱根登山鉄道「強羅」駅前から「施設めぐりバス」に乗車し「ポーラ美術館」で下車。バスの所要時間は13分ほど。

[利用ガイド]
■開館時間:9:00-17:00 (最終入場16:30)
■年中無休 (但し展示替え期間は休館)
■入館料:大人1800円 シニア1600円 大学生・高校生1300円 中学生以下700円


作成:2005/12/3 最終更新:2005/12/4
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:Nikon D70
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