|
||||||||||||||||
かつて横浜一を誇ったホテル。 この名建築をもっと活用できないだろうか…。 |
開港地である横浜には明治以降外国人向けのホテルが数多く建てられていたが、関東大震災でそれらは軒並み倒壊してしまった。震災後、外国人の需要に応じたホテルの建設は急務となり、横浜市が中心になって震災復興のシンボル的意味合いを持つ新たなホテルが建設されることになった。完成後は東京の帝国ホテルと同様、外国人に一流のサービスを提供できる数少ないホテルとして機能し、空襲で壊滅した横浜にあって戦災を免れた。 ここに投宿した有名人は多いが、中でもマッカーサーとの関わりは有名だ。
では建築としてのホテルニューグランドを見ていこう。 外観デザインは至って控えめだが、街並みを乱さないという点で優れたデザインだと感じる(photo#2,#3)。 この建築の見所はむしろ内部空間にある。 エントランス(photo#3)から中に入ると目の前に階段が出現する(photo#5)。そこを上がっていくと2階にロビーがある(photo#4)。東洋趣味(photo#7)が入り込んだ、厚みのある空間だ。通常フロントとロビーは1階に置かれるが、このように2階に置いた方が、街の喧噪から切り離される分、落ち着いた空間になる。以前はここにフロントがあったが、後に増築された高層棟に移ってしまった。つまりこのロビーは、隣接する宴会場の談話スペース以外の機能を持っておらず、普段はこのように閑散としている。 かつては外国人専用、たとえ日本人が泊まるとしてもかなり上の階層であり、動かしがたい格式というものがあったはずなのだが、今ではごく普通のホテルの座に甘んじているように感じる。しかるべき改修を施してやれば比類無き輝きを取り戻すに違いないが、現状を見る限りそのような意識は感じられず、「さっさと壊して建て直したいけど歴史的建造物だから壊せないんだよなぁ…」がホテル側の本音なのでは?と疑いたくなる。 だがどうだろう。増築した高層棟(photo#8)はどこにでもある普通の建物で、旧館に全く及ばないばかりか、山下公園から見たスカイラインを大きく乱してしまった。 帝国ホテルは一部を残して取り壊されてしまったが、こちらは丸々残っている。しかしただ残しただけでは不十分だ。新築では絶対に作り出せない重厚な空間をどう活用するか考えた方がいい。最も可能性があるのは、2階ロビーの雰囲気を残しつつ改装して飲食店にすることだろう。山下臨港線プロムナードの完成によって赤レンガ倉庫を含む臨海部の回遊性が増しているので、休憩場所として活用する方法もある。 [参考文献・サイト] 1) 藤森照信(1997)「建築探偵奇想天外」朝日新聞社 2) 「ホテルコンシェルジュ」内のホテルニューグランド紹介ページ 3) ホテルニューグランド オフィシャルサイト [行き方] みなとみらい線「元町・中華街」駅から徒歩3分。個人的には水上バス(横浜駅・パシフィコ横浜と山下公園を結ぶ)が超おすすめ。
|
|||||||||||||||
ホテルニューグランド Hotel New Grand |
||||||||||||||||
#1:夜のロビー |
||||||||||||||||
|
||||||||||||||||
神奈川県 INDEX | ||||||||||||||||
(C) Copyright 1998 FORES MUNDI All Rights Reserved | ||||||||||||||||