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広島県 INDEX
English (arch-hiroshima)
日本で最もインターナショナルな地に置かれたアート作品。
表現のための画像データとしての「平和」という文字をどう捉える?
DATA
■設計:ジャン・ミシェル・ヴィルモット(Jean Michel WILMOTTE)+クララ・アルテール(Clara HALTER)+大林組広島支店(Obayashi Corp.)
■所在地:広島県広島市中区中島町57-2, 57-3
■用途:パブリックアート
■規模(1基あたり):高さ9025mm 幅2640mm 奥行1600mm
■構造:S造
■竣工:2005年7月
付近の地図(mapion)
この光景を見ながらつくづく思うのは、この地は日本国内で最もインターナショナルな場所ということだ。この場合のインターナショナルとは外国人が多く歩いているという意味ではなく、無国籍というニュアンスである。

人類史上まだ成し遂げられていない(そして残念ながら当面は成し遂げられそうにない)恒久平和というものを街ぐるみで大真面目に考え続けている(公金を投じ続けている)事例は世界を見回してもそう多くない。この論を進めていくと行き着く先は究極の「そもそも論」であり、そこに国家・民族・宗教などという要素は何ら意味を持たない。

この思想を現実の空間に焼き付けて後世に残す大役を担ったのが丹下健三だ。彼は平和記念資料館をどの国のものでもない人類普遍の建築様式とすることにこだわり、ル・コルビュジェの造形にそのヒントを求めた。その判断は的確だったと言って良いだろう。
平和の門
Gates of Peace
平和大通りの緑地帯に出現したアートワーク(芸術作品)。鑑賞される以外の機能はなく、実用性0%作家性100%の特殊な建築とも言える。

#1:15mmの強化ガラスにセラミックプリントで文字が描かれている。

#2

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#4

#5
「国籍・民族・宗教・性別は不問。うちの思想に賛同する人寄っといで」 という姿勢は、外国人にとって取っつきやすい(決して悪い意味で言ってるのではない)わけで、かくしてHIROSHIMAの知名度は世界的に極めて高く、広島をテーマにしたアート作品が世界中で生まれることになる。

前置きが長くなってしまったが、このアート作品もそういった文脈の中の一つだと思う。ゲートという万国共通の形の中に、「平和」という文言を18の文字と49の言語で記している。ゲートの間隔は丹下へのリスペクトを表して平和記念資料館のスパンに合わせ、ゲートの数はダンテの「神曲」に出てくる9の地獄に被爆を加えて10基としたのだという。ダンテの「神曲」が人類共通の古典であるかはともかく、インターナショナリズムの表現方法として大きく外してはいないと感じた。

一つ気になったのは、こういったアートではメッセージ発信にはなっても慰霊にはならないのではないかという点だ。フランス人グラフィックデザイナーであるアルテール氏が仮に日本語の「平和」という文字を読むことができないなら、文字をテキスト情報ではなく画像情報として認識することになる。
絵としてのバランスを見ながら納められたアートワークが、それを絵ではなく言葉として数十年唱え続けてきた広島の当事者の心に届くかと言われると、私は否だと思う。

だが実体験を持つ当事者の数がゼロになる日は間違いなくやってくる。批判を恐れずに書くと、当事者ではない世代に思想を伝承するには慰霊碑の類だけではやはり力不足で、こういったアートの力(や音楽の力)も借りるべきではないだろうか。
作成:2005/9/10 最終更新:2006/9/20
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:NikonD70
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