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山口県 INDEX
軍国昭和への必死の抵抗か、あるいは現実逃避?
戦時下における傑作建築を見る。
DATA
■設計:佐藤武夫
■所在地:山口県岩国市横山2-7-9
■用途:博物館
■竣工:1945年(昭和20)3月
■構造:竹筋コンクリート造
 (※無筋という説あり)
■延床面積:
付近の地図(mapion)
写真にあるように外観は何だか重苦しいが、内部の展示室に入ると様相は一変する。

この建物の竣工はなんと昭和20年3月(1)
建築資材、特に鉄を入手することは困難であったために竹筋コンクリート造(竹で鉄筋を代用したもの)という建築史的にも珍しい存在になっている。当然強度が格段に落ちるため太い柱が必要になるわけだが、このハンデを逆手にとって太い柱をデザインの一部に取り入れている点は素晴らしいと思う。
また展示室にはトップライトが設けられ、窓の小ささを補っている。

感想として、建築の仕事といえば軍需工場ぐらいだった時代にデザイン物としての建築が生まれていたという事実にまず驚かされた。しかも殺伐とした軍国昭和ではなく暖かみのある大正的なデザインで内部を満たした(←私の印象)ところに設計者の強い意志を感じる。

”建築探偵”藤森氏も著書の中で似た見解を述べている。
建築家の佐藤武夫は、大正期のロマンチックな芸術的環境の中で自己形成をとげたせいで昭和十年代の荒っぽい時代の相になじめず、昭和十七年からのドン詰まりの四年間を郷里の小さな博物館の建設に注いだのだった。
(藤森照信「建築探偵神出鬼没」1997 朝日新聞社 より引用)

勝手な想像だが、本当は外観も内部と同じようにしたかったのでは?と思った。

岩国徴古館
Iwakuni Chokokan
錦帯橋で有名な岩国城下に建つ小さな博物館。施主は元藩主の吉川家とされる。現在は錦帯橋などに関する資料が展示されているものの、訪れる観光客の姿も少なく、忘れられたように建っている。だがせっかく岩国に来たのならぜひ錦帯橋だけでなくこの徴古館まで足を伸ばして欲しい。これこそ建築家佐藤武夫の戦時下における傑作であり、現在の佐藤総合計画のルーツとも言える重要な建築なのだ。

#1:ファサード。外観は何だか重苦しい。ところが中に入ると…。

#2:展示室。太い柱とアーチで満たされた白の空間。柱が多く全然見通しがきかない。柱の独特の形状は竹筋ゆえなのだろうか…。
#3  #4:開口部の不足をトップライトで補う。  #5:らせん階段もある。

#6:エントランスホール。

#7:徴古館の周辺。
[補注]
(1) 起工は昭和17年9月

[参考文献・サイト]
1) 藤森照信(1997)「建築探偵神出鬼没」 朝日新聞社
2) 佐藤総合計画ウェブサイト http://www.axscom.co.jp/

[見学ガイド]
・開館時間:9時-17時
・休館日:月曜、祝日(ただし月曜日が祝日の場合は翌日)、12月28日−1月5日、5月4日
・入館無料
作成:2001/8/23 最終更新:2006/4/24
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:CanonPowerShotG1
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