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暫定利用の宿命、建築の安っぽさを小手先修景で克服。 |
小手先修景とは、私が今勝手に考えた言葉だが、要するに、
ちなみにコストダウンのため各店舗のファサードはユニット化されており、結果的にこれが街並みに統一感とリズムを与えている点も見逃せない。(写真#8) 空間デザインで注目されるのは、ほどよい閉鎖性を与えられた「マーケット広場(写真#1,#2,#12,#13)」と、広場からアンカーショップの「トイザらス」に至るS字の通路(写真#6, #10)だろう。S字にしたのは限られた敷地に多くの路面店を置くためであるが、この見通しが悪い路地から広場に出るときの視界の開け方は、ヨーロッパの広場にも似た(1)空間体験と言える。 建築意匠の美しさだけに目がいく人はこういう”庶民化された”施設はあまり好まないかもしれない。しかし私の見る限りこの施設のデザインコードはこの地にピッタリと適合している。北山氏がコンテクストを読み切ってデザインを適合させたのか、氏のデザインコードがたまたまこの地に適合したのかは判断できないが…。 建築雑誌に載る真新しい竣工写真は建築家がその建築で表現したかった姿、すなわち図面を具現化したものだ。しかしそれは建築が見せる姿の1シーンでしかない。 例えば竣工時はガラスを多用した軽快なファッションビルだったものが、5年10年と時を経るに従い、看板が追加されガラスは汚れ、見るも無惨なことになっているとする。この場合問題は二つあって、こういう使い方をされるだろうと設計者が読み切れなかった(或いは最初から読む気が無かった)過失と、マネジメントに失敗した過失だ。 サンストリートの場合、当初から空間の使い方が十分検討されていて、完成後のマネジメント組織も機能しているため、現況は竣工写真からの悪化が最小限に食い止められている。(むしろ良くなっているかもしれない) この広場では本当に毎日のようにイベントが開かれている(2)。その内容は多彩で、仮面ライダーショウや歌手のプロモーション興業から物産展まで。これだけ活用されている屋外広場は国内では少ないはずだ。ステージ上から見渡すと聴衆の顔まで確認でき一体感がある。(3) サンストリートに実際に行ってみると、まず低層の良さというものを感じることになるだろう。各地の大型商業施設で見られるように屋内空間を屋外風に演出したとしても、日差しや風を再現することはできない。 こういった魅力的な都市型の低層施設が期間限定でしか実現しないのは残念なことだ。暫定使用終了後にどうなるのか注目したい。 |
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サンストリート亀戸 Sun Street Kameido |
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セイコーの本社および時計工場移転に伴う再開発。当初は36階の高層棟を備えた、ありがちな再開発になるはずだったが、バブル崩壊等情勢の変化から15年の暫定利用が決まり、基準容積率350%に対し開発容積率124%という、駅前&幹線道路沿いとしては信じがたいほど低層の商業施設となった。 | ||||||||||||||
#1:サンストリートの中心、マーケット広場。外部からの視界を一部遮り、魅力的な広場空間を実現している。一見ゴチャゴチャしてそうで実は賑わい演出に一役買っている看板類にも注目。 |
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[補注] (1) 楕円にも似た一見不整形な広場はシエナのカンポ広場あたりを参考にしたのかなと推測する。 (2) 細かなものを含め年間で500件近くのイベントがある。スケジュールはサンストリートの公式サイトに載っている。 (3) 参考文献 3) に記載されている篠原修の研究によると、人間が相手の表情を読みとれる限界は12m、相手が誰であるか認識できる限界は24m、相手が何をしているか認識できる限界は135m、人間が居ることを認識できる限界は1200mであるという。マーケット広場の短径は約30mだから、ステージから客席を見渡した際、その中に知り合いがいるか否かがギリギリ判ることになる。 [参考文献・サイト] 1) サンストリート亀戸 公式サイト 2) 北山創造研究所 公式サイト 3) 篠原修 編・景観デザイン研究会(1998)「景観用語辞典」彰国社 pp44 4) 北山孝雄(2003)「成熟社会の商業施設と風水」雑誌 都市計画245, pp49 5) 日経アーキテクチュア 1997年12月29日号 pp72-75 [行き方]
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