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岡山県 INDEX
様式建築のリノベーション。
建築的な洗練度は全国屈指だ。
DATA
■設計:長野宇平治
■改修設計:佐藤正平/佐藤建築事務所+岡山県設計技術センター
■所在地:岡山県岡山市内山下
■現在の用途:多目的ホール
■竣工:1922年(大正11年)
 改修:2005年(平成17年)
■規模:敷地面積2882m2、建築面積1399m2(計画部分)、延床面積2458m2
■構造:煉瓦造、RC造、S造
付近の地図(mapion)
岡山市の中心部、岡電の軌道に沿って建つ公共ホール。元は日銀の岡山支店であり、様式建築の名手である長野宇平治が各地に残した銀行建築の一つである。

昔の銀行、特に金本位時代の銀行は大量の紙幣や金塊を建物内に収蔵するがために極めて強固に設計されていたため、リノベーションを考える上では有利だ。しかしこの建築は(関東大震災前であるためか)基本的に煉瓦の組積造であるため、垂直方向の力には強いが横方向に揺さぶられるとガラガラと崩れてしまう。この水平力に対抗するため、リノベーションにあたっては室内に4本の柱が新設された。この柱には空調・音響・照明が集約して組み込まれており、リノベ時に何を追加したのか分かりやすい。もちろん内装デザイン上のアクセントともなっている。なかなかうまい解き方だ。(写真#2)

改修設計の意図については参考文献2)に記載があるので少し長いが引用する。
−(略)−
本館の持つモデュール(柱間3,030mm)を新築部に延長し、全体でひとつの秩序を形成すること。また、本館のオーダーのモチーフを現代的にアレンジし、都市に対する新たな構えを築くこと。通行軸に外部空間(エントランスアプローチ、コート、テラス)を多く取り入れることで、透けた空間構成を実現すること。その一方で建築の諸要素−柱、壁、天井、サッシ、屋根等をすべて同系色で仕上げ、リテラルな透明性を獲得するなどの操作により現代的な質を保ちながら、古典性に同調する空間を提案した。
(佐藤正平/雑誌「新建築」2005年10月号pp178より引用)

また、この施設が指定管理者制度によりNPOに管理委託されているのも重要なポイントだ。多くの公共建築がローテーションで回ってくる(えてして芸術に無理解な)役人の手によって見るも無惨なことになる(例えばデザイン性ゼロのサインを壁に貼るなど…)が、ルネスホールでは設計者の意図通りの空間が(今のところは)保たれている。経費節減が主目的の指定管理者制度ではあるが、建築のクオリティを保つ効果も大きいなと改めて感じた。

総合評価としては、今どきのリノベーションとしては全国でも第一級の洗練度で、細部までデザインの手が行き届いている。岡山市内で建築探訪をするなら外せないスポットといえよう。
ルネスホール / 旧日本銀行岡山支店
Renaiss Hall / Former Okayama Branch of Nippon Ginko

#1:ファサード。列柱を備えた正面エントランスは閉鎖され、増築部にエントランスが新設されている。増築部は彩度を抑え軽快な意匠でオリジナルとの調和がしっかり果たされている。欧州ではありふれたことだが国内では珍しい。

#2:ホール内部。向かって右側壁面が#1のファサードにあたる。室内には耐震補強のための太い柱が新設されている。

#3:本館(左)の裏側の建物は解体撤去されこのような中庭になった。写真ではうまく写せてないが、この外構デザインもいい感じ。
4 5 6 7
8 9 10
4:ファサードを彩るオーダー 6:新設エントランス 7:エントランス内部 8:中庭まわり 9:中庭 10:増築部の内部 (写真4〜10はクリックすると拡大表示します)
[参考文献・サイト]
1) ルネスホール公式サイト
2) 雑誌「新建築」2005年10月号


[行き方]
[電車の場合] JR岡山駅から東山行き路面電車に乗車し「県庁通り」で下車、徒歩3分。

[見学ガイド]
基本的にイベント等がなければ自由見学可能。
作成:2008/5/17 最終更新:2009/1/26
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:Nikon D70
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