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お湯に浸かって建築鑑賞という贅沢。 |
建物の中心は何といっても「千人風呂」だろう。その浴槽は大理石製の幅4m長さ7.5m深さ1.1mという大きなもので、千人は無理だが百人が一度に入れるという。深いので当然立ったまま入ることになるが、底には玉砂利が敷いてあり感触が良い。 浴場にはステンドグラスや彫像もある。これらは建設時にデザインされたもので、見ていて楽しい。さらに建設当時は男湯と女湯の境に巨大な水槽が設置され、魚が泳いでいたという(これは現存せず)。
デザインの他に強調しておきたいのは、この建物が現役の温泉施設として地域の人々に親しまれているということだ。 近年クアハウスと名の付く施設は農村を中心に多く作られるようになったが、このような鑑賞に堪える建築にはお目にかかったことがない。設計する側と使う側の目論見が今でも一致している、幸福な例と言えよう。 歴史的建造物の中に身を置き、熱いお湯に浸かりながらステンドグラスを鑑賞する贅沢が400円で体験できる。建築ファン以外にもおすすめできる施設だ。 [補注] (1) 森山松之助(1869-1949) 1897年東京帝大造家学科卒。代表作は片倉館、旧オーストラリア大使館、旧東京弁護士会館、台湾総督府 [参考文献・サイト] 1) 財団法人片倉館ウェブサイト [行き方ガイド] ・中央自動車道諏訪I.Cより7km ・JR中央本線上諏訪駅より徒歩5分 駅から諏訪湖に向かって進むと見えてきます。湖岸を走る道路沿いなので車からも見つけやすいです。 [利用ガイド] ・営業時間:10:00-21:00(受付は20:30まで) ・火曜休館(祝日の場合は営業) ・入浴料:大人400円、子供300円
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片倉館 Katakurakan |
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片倉館とは、諏訪を拠点する世界最大の製糸家、シルクエンペラーと呼ばれた片倉家の二代目片倉兼太郎(かたくらかねたろう)が、住民や工員の福利厚生のために建てたクアハウス(kurhaus)である。片倉は大正11年から12年にかけて世界一周旅行を行った際、欧米諸国での地域住民に対する文化福祉施設の充実ぶりに感嘆し、このような施設をぜひ諏訪にもと財団法人片倉館を設立した。敷地内にはもう一つ木造の建物(#6)や庭園などがあり、当時は一大行楽地であったという。昔は現在よりも水面が建物に迫っており、日本離れした水辺の風景を形成していた。 |
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#1:ファサード |
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長野県 INDEX | ||||||||||||||||||
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