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広島県 INDEX
日本三大醸造地の一つ。
その風景には現役であるが故の美しさがある。
DATA
■建設時期:江戸時代〜
■所在地:広島県東広島市西条本町ほか
■用途:酒造工場等
■付近の地図(mapion)
東広島市は広島大学の誘致や工業団地の開発を相次いで成功させ(1)、人口と税収を大きく伸ばした。日本において最近20年で最も成功した自治体の一つと言ってよいだろう。その中心地である西条では道路拡幅が進み、町家群に代わって近代的な街区が整備されつつある。ただし、この街には拠点市街地というものが存在しないように見受けられる。理由は推測になるが、
・理由1:合併で誕生したが故の多核構造
・理由2:隣接するメガシティ(広島市)の圧倒的な求心力(=生活必需品以外の買い物は広島で済ませてしまう)
・理由3:急速な発展に基盤整備が追いつかない
…といったところだろうか。

さて、この西条は灘・伏見と並ぶ日本三大醸造地の一つに数えられる"酒造りのまち"として知られている。醸造所はJR西条駅から東側のエリアに集中しており、徒歩で容易に見て回ることができる。


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賀茂鶴酒造(photo#2, 3, 4)
西条での酒造りは江戸初期に始まったとされているが、同時に山陽道屈指の宿場町「四日市宿」としても繁栄した(3)。宿場では一般的に大名等が宿泊する「本陣」を地元の名家に任せるが、西条の場合は広島藩直営の本陣(4)が置かれており、賀茂鶴酒造の敷地内にその正門が残されている。
醸造所は酒蔵・事務所・煙突がセットになってコンパクトにまとまっている。煉瓦造の煙突に取り付けられた文字看板がいい感じ。
建築群は大正期〜高度成長期あたりが混在しているように思えるが、デザイン規範がしっかりしているので違和感が少ない。逆に言うと、見ただけでは建築年代を推測しにくい。

賀茂泉酒造(photo#7, 8)
敷地内に建つ「酒泉館」は旧県立醸造支場(1929年)を改装したもので、直売のほか、お酒喫茶も営業中だ(5)




全体を通じて強く印象に残ったのは、伝建でもないのによくデザイン規範が守られているという点だ。江戸時代の建物がごっそり残っているわけではないのに低層+白壁+石州瓦を合わせていくことで、建物を更新しつつも特徴ある景観、すなわち観光客に過度に媚びていない現役醸造所としての景が守られている。こうなった経緯等については不勉強なので今後調べてみようと思う。

さらに酒蔵ゾーンにとって幸運なのは、迂回道路が一応整備されていることだ(6)。これなら現在抜け道的に使われている地区内道路の一方通行化や歩行者天国化も、地元合意さえあれば不可能ではないだろう(7)

一方で懸念されるのが、西条の急速な人口増に起因する高層化圧力だ。背の高いマンションが建っているのは駅前の大通り(photo#13)だけで、酒蔵エリアからはまだ距離があるものの、今後も安泰という保障はない。
私は大通りと酒蔵エリアとの間のバッファーをどう誘導するかが勝負だと見ている。現状を見てみると、中層+白壁+石州瓦でRCなんて事例もある(photo#12)。だが、少なくとも道路沿いは低層で軒線を合わせていかないと奇妙さが残ってしまう。
本気でやる場合は景観地区を使って「低層+白壁+石州瓦」以外の建物を原則許可しないことだって可能だが、伝建でもない街並みを守ることは自治体にとって一歩先に進んだ(先走ったとも言える)判断ということになり、かなり難しいだろうと思う。
西条
Saijo

#1:酒蔵通り(賀茂泉酒造周辺)の街並み。赤い瓦は石州瓦(2)で、広島の農村部では今でもこの瓦を使うことが多い。

#2:西条のトップブランド、賀茂鶴酒造。建築年代は未調査。煉瓦造の煙突はどの蔵にとってもシンボルだ。

#3:四日市宿本陣の門

#4

#5

#6

#7:賀茂泉酒造

#8:酒泉館

#9:亀齢酒造

#10:同左

#11:同左

#12:酒蔵エリア(奥)と大通り(手前側)とのバッファー空間。どういう協議を経てこうなったのか、石州瓦を使ってくれているが、やはり軒線の統一が必要な気がする。

 #13:駅前の大通り。正面突き当たりが西条駅。

#14:石州瓦の向こうにはショッピングセンターの看板。ロードサイドでの視認性と農村景観への影響を総合的に考え規制するべきだろう。
[補注]
(1) 例えばエルピーダメモリの東広島進出は世界的なニュースとして記憶に新しい。
(2) 石見国(島根県)で生産される瓦。参考サイト 2) などを参照のこと。
(3) 四日市という地名はどうやら残っていないようだ。
(4) 正確に言うと、四日市宿の場合は「本陣」ではなく「茶屋」と呼ばれていた。
(5) 酒泉館は平日は閉館の可能性があるので、事前に確認した方が良い。
(6) むしろ道路建設などの理由で多くの町家が取り壊され、運良く残ったのが酒蔵エリアだと言うべきかもしれない。
(7) 西条と対極にあるのがで、地形の制約から域内道路に通過交通を入れざるを得ない苦しいケースと言える。

[参考文献・サイト]
1) 東広島市観光協会ウェブサイト …東広島全体の観光について
2) 石州瓦工業組合ウェブサイト
3) 酒まつりウェブサイト …酒まつりを始めとした、西条のまちづくり状況を知ることができる。

[行き方ガイド]
電車の場合
JR西条駅から酒蔵エリアまでは徒歩3分ほど。広島-西条間は36分。山陽新幹線「東広島」駅からタクシーという手もなくはない。
自動車の場合
山陽自動車道「西条」ICが便利。ただし広島から行く場合は旧道(国道2号)でもよいと思われる。
※広島空港から直接西条に行く場合は、空港から白市駅行きのバスを利用し、白市からJRで西条を目指すのがおそらく最短。ただし本数が少ないので注意。
作成:2004/12/30 最終更新:2005/1/2
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:Nikon D70
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