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旧海軍根拠地の面影を残す貴重な遺構。 |
イギリスに範を求めた(1)海軍だけあって、外観はイギリス風のハーフティンバーで屋根は天然スレート葺き。品格が備わった外観だ。洋館の背後には和館(写真#7)があり、司令長官および家族の普段の住まいとして使用された。 設計は当時の呉海軍経理部建築科長であった桜井小太郎(1870-1953)。若くしてイギリスに渡り研鑽を積んだ建築家であり、この仕事には最適任であったことだろう。
この建築の内装上の特徴は、明治期に流行した「金唐紙(きんからかみ)」(2)だ。占領軍に接収されていた間にペンキを塗られてしまったため、1991年にこの建物の復元作業を開始して初めて金唐紙が使われていることが判明し、建築当初の姿に戻すために金唐紙を新たに製造することになった。今見ることができる壁紙はそのときに作られたものである。 |
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旧呉鎮守府司令長官官舎 Residence of the Commander-in-Chief of former Kure Naval Sta. |
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旧練兵場や旧下士官兵集会所、さらに旧海軍病院に囲まれた旧海軍エリアのただ中に建つ官舎。 | |||||||||||||||||||||||||||
#1:ファサード。大小二つの切妻にハーフティンバーが装飾的に使われている。 #2:洋館部分の応接室
#7:和館部分 |
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[補注] (1) 海軍は設立当初からイギリス式を直輸入したわけではないが、概観すればイギリスに範をとったものとなっている。ちなみに日露戦争で活躍した戦艦三笠もイギリス製である。 (2) 金唐紙とは… 17世紀のヨーロッパでは建築の壁、天井に装飾革を使用することがあった。装飾革とは革に金属箔を貼り、花や動物をデザインしてプレスし、塗料・ワニスなどで彩色して仕上げたもので、これが日本に伝わり「金唐革」と呼ばれて珍重された。その後革の代わりに和紙を使う方法が考案され、「金唐紙」が誕生した。明治期には輸出も含めて大々的に生産されたものの、大正以降はほとんど使われなくなる。金唐紙を使用した他の建築としては、「旧日本郵船小樽支店(北海道小樽市)」、「旧第五十九銀行本店本館(青森県弘前市)」、「旧林家住宅(長野県岡谷市)」、「東京芸術劇場(豊島区)」 がある。 [参考文献・サイト] 1) 日本建築学会(1998)「総覧 日本の建築 第8巻」新建築社 pp182 2) 広島県文化財協会「広島県文化財ニュース 第161号」 [見学ガイド] (入船山記念館) ・JR呉駅から徒歩13分 ・休館日:月曜(ただし祝日・休日の場合はその翌日)および年末年始(12/29-1/3) ・開館時間:9時-17時 |
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