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広島県 INDEX
広島に残る表現主義建築
DATA
■設計:伊達三郎/広島県建築課
■所在地:広島県広島市中区江波南1-40-1
■当初の用途:気象台
■現在の用途:博物館
■竣工:1934年(昭和9年)12月
■構造:RC造2階
■付近の地図(mapion)
建物の内外は一般に表現主義と呼ばれるスタイルで、曲線が多用され柔らかな表情を見せている。殺伐とした昭和ではなく大正的な優しいデザインだ。全体を通して見てもデザイン上の隙はないが、特にエントランス周りの逆円錐柱(しかも一本の柱で庇を支えている!)や観測塔の片持ち階段(RCならではの造形であり組積造では実現不可能)からは、建築家の「ここ頑張ったよ」という声が聞こえてきそうだ。
一方でファサードにおける壁の割合が高く、気象台としての実用に耐える堅牢な造りがうかがえる。(写真#1) このように極めて堅牢な構造であったため、被爆時も爆風の直撃に耐えた。(ただし建物の全てのガラスが吹き飛んだという)

北側(都心側)の壁面は改装時に手を加えずに保存されている。(写真#5) くすんだ色になっているのは、戦時中の迷彩塗装の痕跡とされる。塗った程度でごまかせるとも思えないが、江波山に高射砲陣地(今は公園になっている)が設けられており爆撃対象となることが想定されていたためだろう。

屋内空間にも見どころが多い。天井周りにも曲線が多用されており、各所の装飾は左官職人の技量の高さを感じさせる。また、階段の手すりや床は人造石研ぎ出し仕上げとなっている。(写真#8) 天然石に近い風合いを出すのが目的だと思うが、ここまで磨き上げるには相当の手間がかかったことだろう。


戦後になると、平和資料館を皮切りにモダニズム全盛となり、建築から装飾が失われていく。それだけに広島に残るほぼ唯一の表現主義的建築として本作の存在は極めて貴重だ。建築ファンなら外せないスポットと言えよう。
広島市江波山気象館 /旧広島地方気象台
Ebayama Museum of Meteorology
広島市デルタ(三角州)の南端にある江波山の頂に建てられた気象台。1934年に「広島測候所」として建てられ、1987年に上八丁堀に移転するまでの間広島地方気象台として使用された。その後、気象をテーマにした科学館に改装され、1992年に再オープンした。

#1:ファサード。左の建物は戦後の増築部。

#2エントランス

#3
観測塔の造形

#4
片持ち階段

#5
都心側壁面

#6:エントランスロビー

#7

#8

#9
[参考文献・サイト]
1) 宮本和義+建築知識編集部 2002 「中国・四国を歩こう!建築グルメマップ2」 エクスナレッジ pp11
2) 江波山気象館オフィシャルサイト
3) 広島市+被爆建造物調査研究会(1996)「ヒロシマの被爆建造物は語る」広島平和記念資料館

[見学ガイド]
・ 開館時間:9:00-17:00(入館は16:30まで)
・ 休館日:月曜日(5/3-5/6と11/3は除く)、祝日の翌日、年末年始(12/29-1/3)、8/6、5/6-5/8
 (詳細はウェブサイトで確認した方がよい)
・ 入館料:大人100円、小人50円

[行き方ガイド]
広電(路面電車)の場合は江波行きの終点「江波」で下車。そこから徒歩で15分ほど。
バスの場合、「かきうち通り経由江波方面行き」に乗り「江波小学校前」で下車し徒歩5分。
自家用車の場合、敷地内の駐車場を利用可。
作成:2000/3/22 最終更新:2010/1/10
作成者:makoto/arch-hiroshima 使用カメラ:NikonD90
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