鈴が峰住宅(市営・公団)

現代計画研究所ほか

[注意] 鈴が峰住宅は現役の住宅です。見学にあたっては住民のプライバシーを考え、外観撮影であっても十分に配慮するようにしてください。


#1:全体像(上が北)

高陽ニュータウンと共に広島を代表する大型団地。東~南向きの眺望の良い斜面に沿って建てられている。現地案内板によると市営住宅と公団住宅(現在のUR都市再生機構)で構成されているようだ。プロジェクトの詳細は資料が見つかり次第書くことにして、ここではとりあえず気になった区画について感想を書くことにしたい。

市営鈴が峰東
東向きの急傾斜地ということもあり、南北に細長い住戸棟をレベル差をつけて階段状に配置している。高台に位置し遮るものがないので、住戸からの眺望は申し分ない。ファサードの凹凸などデザインパターンを棟ごとに少しずつ変えながら、全体としてはそこそこの統一感を出している。住棟間の空隙は井戸端会議などの”たまり”を意識しているようだが、あまり有効には使われていないようだ。

市営鈴が峰西
こちらは東アパートよりさらに急な傾斜地で、ほとんど崖のような場所に建っている。地形に対応するため各階でセットバックさせており、独特な階段状の外観を見せている。住戸へのアプローチは住棟間の階段を利用する。エレベーターがないため、現代の集合住宅と比べて階段の存在感がとても大きく、地味ながらちょっとした意匠を施している。公営住宅なので、六甲の集合住宅(安藤忠雄)のように傾斜地のポテンシャルを引き出し賃料を上げるための建築デザインは求められていない。おそらく廉価な住戸ユニットを効率的に並べただけなのだが、ここまで並べると壮観で、団地ならではの迫力がよく出ている。

公団鈴が峰第2
今回見た中では最もデザインに気を遣っていて高級感のある事例。バルコニーを小さくし、立面の凹凸を上手にデザインしており、ヨーロッパのコンドミニアムを思わせる外観となっている。ただ洗濯物が干されているので日本であることはすぐ分かるけど…。

公団鈴が峰第3
低層の公団住宅。住戸を雁行配置し、入隅の部分に三角形のバルコニーが置かれており、微妙に折れ曲がった外観を見せている。この住棟が2棟平行に並んでいて、その間には中庭空間が設けられている。この中庭は程よいスケールの緑豊かな空間となっていて、住環境の質を高めている。