広島県庁舎

日建設計 1956

戦災復興のただ中、1956年に竣工した庁舎建築。現代から見ると全てが手狭に感じられるが、当時としては大スケールの建築であった。モダニズムの文法に忠実な、機能的合理性で形成された建築であるが、多くの建具が木製で、ヒューマンスケールからも脱しきれておらず、大ざっぱさはなくて豊かな表情を見せてくれる。狙ったわけではないだろうが「丁寧な大建築」とでも呼べようか。
ざっと見た限りでは、あらゆる訪問者が感銘を受けるような”見ごたえのある空間”は見あたらず、プリミティブなモダニズムが響く玄人向けの建築といえ、建て替え論議においても「優れた建築だから残そう」という話は出てこない。だが、あらゆるエレメントが古くさいというのは、保存状態が素晴らしいとも言え、もともとのデザインは破綻せずにおさまっているので、きれいにリノベーションできれば素晴らしい輝きを放ってくれるだろう。

仮に建て替えるにしても、駐車場になってしまっている前庭はぜひ再生すべきだろう。活用が下手だから駐車場になってしまうわけで、基町クレドの広場と呼応させ、うまくマネジメントを機能させれば貴重な都会のオアシスとなってくれるはずだ。

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