宇品御幸松地区広場トイレ

阪口雄大・赤岸一成・斉藤綾花/広島工業大学 2017

#1:海に近いが海は見えない

#2:平面プランのイメージ

広島デルタの南端、宇品の水辺に建つ公衆トイレ。広島県が主催する「広島建築学生チャレンジコンペ」により、広島工業大学 村上徹研究室の学生チームが設計者に選定された。世の中に学生向けコンペは多数あるが、実現を前提とするものは非常にユニークであり、注目すべきだろう。

計画地は、海岸線に沿って設置された防潮堤に接しており、防潮堤があるため海を直接見ることはできないが、広島港から倉庫街エリアに至る水辺のプロムナードに面している。
そこで、海を思わせ動線の道しるべとなる「灯台」をコンセプトに据え、背の高い屋根を付ける形態となった。この屋根はテント地?になっており、昼間は外光を柔らかく取り入れ、夜間は照明により屋根全体が光って広場の行燈となる。 煙突効果により上方への空気の流れが生まれ、トイレの臭気を上方に逃がせる効果もありそうだ。

平面プランもシンプルながら示唆に富んだものだ。正方形を田の字に分割し、男用・女用・兼用・身障者用の4室を設け、四周いずれからも4室にアプローチできる。どこまで設計で意図されたのかは分からないが、入口では男女を区別しないことで、子連れやトランスジェンダーへの平等感も高いように感じられた。

感じた課題としては、果たして今後もこの白さを保てるのかという点と、これがトイレであると分かりにくいために役人に醜いサインを付けられてしまうリスクへ対処していない点だろうか。