呉市水道局庁舎

不詳

#1:外観

モダニズム建築というのは、ありふれた存在とみなされているのか、装飾のような分かりやすいアイコンがないためか、名品の良さがなかなか理解されない。明治期のレンガ建築が保存される横で、昭和期のモダニズムが躊躇無く解体されたりする。かく言う自分自身も、その善し悪しが見分けられるようになったのはごく最近のことだ。

呉市の市街地に建つこの庁舎も、無名だが良質なモダニズム。大傑作とは言わないが、全体のプロポーション、縦ルーバーの配置、キャンチまわりの造形など、品良くまとめられている。なにより、設計者が丁寧にデザインを考えた跡が感じられる。

現在の設計入札では、こんな丁寧な仕事は期待できず、安かろう悪かろうな設計になる。税金を使うのだから1円でも安ければ良いというのは正論に聞こえるが、結局は市民生活の質を落としているように思えてならない。