カトリック呉教会

イグナチオ・グロッパー? 1953

#1

呉の南西側市街地、小高い丘に建つ教会建築。戦後の木造だが建築としての質は高く、じっくりディテールを鑑賞できる、呉では数少ない存在だ。
本作の設計者は今のところ不詳だが、どうやらイグナチオ・グロッパーが関与しているらしい。グロッパー修道士は戦前期から上智大学を拠点に全国のイエズス会系施設を設計しており、広島では長束修道院、古江修道院、三篠教会、世界平和記念聖堂などで関与したものと思われる。現在の呉教会はイエズス会ではないが、どうやら建設時はイエズス会だったようだ。たしかに三篠教会と比べるとよく似ている。
窓は当然のように縦長で、「上げ下げ窓」への強いこだわりが感じられるのも、本作への外国人の関与を示唆している。エントランス脇に付室または告解室と思われる空間があるが(写真#6)、畳敷と上げ下げ窓という和洋折衷だ。また、外国製と思われるステンドグラス(写真#5)や研ぎ出し仕上げの床(写真#4)も鑑賞に値する出来映えで、本作最大の見どころとなっている。
仮にグロッパー作品ならオーバースペック気味に耐震性を持たせているはずなので、がたつくことも少ないと思うが、それにしても保存状態は非常に良好で、大切に使われてきたことがうかがえる。観光地ではないので、祭事の邪魔にならないよう注意しながら、ぜひ見学してみて欲しい。