勝村商店

不詳

#1:ファサード。目前に雁木があったという。

三原の市街地に残る町家建築の逸品。明治~大正期の、日本における木造建築絶頂期の作品である。 まずは地名に注目しよう。三原の地名はわかりやすくて、西国街道沿道は本町・西町・東町と命名され、江戸時代以来の中心的な商業地と分かる。本作があるのは港町。その名のとおり港があり、目前には雁木があったという。
建物をざっと見てまず気づくのは本瓦(瓦自体は古いものではなく近年葺き替えられたもの)で、やはり桟瓦より一段ゴージャスな印象を受ける。妻側を見ると、水切りの瓦は本瓦ではなく桟瓦であるが、先端が尖っているので「鎬桟瓦(しのぎさんがわら)」という古いタイプ。おそらくオリジナルだろう。裏側に回るとなまこ壁が美しい土蔵。石材も素晴らしい。
そして、最も感銘を受けるのは、これが「○○資料館」などではない、現役の商家という点にある。おそらく三原ではここと酔心だけだろうし、広島県全体を見回したって数えるほどしか残ってないはずだ。メンテナンスをしながら使い続けているオーナーにはただ敬服するしかない。