潜水士のためのグラス・ハウス

中薗哲也 2011

#1:コンクリートブロック積みの上に梁を渡し屋根をかけ、屋根の下をガラスで仕切って居室にする。ごくごくシンプルな構造。

能美島の穏やかな海岸沿いに建つ、潜水会社の保養所。
その構造は極めてシンプルだ。島で土木構造物の材料として多用されるコンクリートブロック(1m-1m-0.5mという大型のもの)を積み上げ、鉄の梁を渡して屋根をかけ、その内側をガラスで仕切って居室としている。コンクリートブロックは梁を支えるだけで居室の壁としていないので、組積造といっても決して重苦しくない。(こちらに内観写真が載ってます
このブロックは、コンクリート工場でセメントが余ったときに作られるものらしく、ブロックができるたびに工事を進めた結果、工期は16ヶ月にもなったという。何とものどかな島らしい建て方だ。
今回は外観を少し見てきただけだが、この建築は、”リアルな地域性”の表現になっていると感じた。かつては木造家屋が全てであった瀬戸内海の島々でもRCやSの建物が増え、それまで石積みだった擁壁や防波堤はコンクリートに変わった。日本の伝統建築は極論すれば木と土でできているが、それは建材を近場で調達するという制約条件があったために他ならない。そう考えると、本作では、島内で安価に入手できるが家の建材とは見なされてこなかった大型コンクリートブロックという素材に着目し、それを説得力のあるデザインに昇華させているわけで、いま目の前にある”リアル”な地域性をふまえた、現代の民家ということもできるのでは?と思う。