安佐南区総合福祉センター

村上徹 2008

#1

#2:周辺のスケールとは乖離している

広島市の北部市街地の福祉拠点。福祉窓口、保健センター、児童館の合築である。著名建築家を起用し良質な公共施設を整備する広島市のプロジェクト「ひろしま2045 平和と創造のまち(以下、P&C事業)」として建設された。P&C事業では「矢野南小」「西消防署」「基町高校」「中工場」と、全国区の建築家が続いていたが、ようやく地元広島のプロフェッサーアーキテクトである村上徹の作品が実現した(元々はこれがP&C事業の第1号案件だったようだ)。

実際に行ってみると、他のP&C事業案件と比べて”遊び”となる空間が少ないのに気付く。エントランスホールにしても面積・天高とも必要最小限で、特別写真映えする空間とはなっていない。もちろん、立面デザインやディテールにはらしさがちりばめられているのだが、全体的に小さくまとまっている感じだ。
これはそもそも施主から要求された条件が過大で、許容ボリューム一杯に床を詰め込まざるを得なかったのが原因だろう。となると、あの丸いガラス面(写真#1の左側)も単なるデザインではないのでは?と思えてくる。住居系の立地から考えて、さては日影かと推測したらビンゴだった。

要求された床面積は、ほぼ許容限界に達するため、道路斜線制限と北側の日影規制から全体の形態を決定せざるを得なかった。 -(中略)- 上層の北側は日影規制の範囲内で最大限の床面積を確保するため、曲面を採用している。3階の北側コーナーにあるふたつの曲面もまた、日影規制による。
(雑誌「新建築」2008年10月号pp139より引用)

建物の構成は、大まかに言って、北側ボリュームが児童館で南側が福祉センターとなっており、比較的交通量の少ない東側道路沿いにメインエントランスが配置されている。南側立面は東側とは違い、メタリックなルーバーで覆われた直線的なデザインとなっている。あのルーバーにどれほどの効果があるのかは興味のあるところだ。