今治市伊東豊雄建築ミュージアム

伊東豊雄 2011

大三島の海岸線近く、風光明媚な丘の上に建てられた、伊東豊雄の名を冠するミュージアム。作品を展示する「スティールハット」と、自身の旧自邸を再現した「シルバーハット」の2棟で構成される。

スティールハット

#1:瀬戸内海を見渡せる高台にある。後述のとおり、外構がほとんどデザインされてないのが残念。

4種の多角形(1辺3m)の鋼板を溶接でつなぎ形作られている展示施設。自然景観の中に挿入された直線という異質なフォルムは、海に浮かぶ船のメタファとも解釈できる。(そういえば今治といえば造船所のイメージが強い)
運用上、エントランスは2階とされ、小さなホールを抜けると3つの展示室があり、さらに階段を降りて吹き抜けのサロンに至る。各展示室の床は正六角形で内壁も外観同様傾斜しており窓もないので、壁・床・天井の区別は曖昧だ。訪問時には開館記念展として展示室の壁や天井にスチレンペーパーでコンタを作った瀬戸の島々(たぶんノンスケール)が貼り付けられ、さらにそこに建築模型が貼り付く…という展示が行われていたが、こういう具合に天井も壁の一部として使ってくれということなのだろう。
ただ、溶接の仕上げは丁寧で良いのだが、ディテールの追い込みが若干甘い印象を受けた。特にサロンに降りていく階段は、このような小さな建物では重要な”見せ場”なのだから、造形にもう一工夫あっても良かったと思う。


シルバーハット

スティールハットから少し下った場所に置かれた施設。オリジナル(現存しない)が建っていた東京の住宅地とはずいぶんと立地が違うが、エントランス位置を変えたり海側の壁を抜くなどでうまく対応していると感じた。大小7つのヴォールト屋根で覆われているが大部分は屋外、テラスでは海風にあたりながらワークショップを行うことが想定されている。屋内部分には伊東作品の図面が置かれ、さらにかなり余裕のある本棚が備え付けられている。


外構はイマイチ

訪問した正直な感想として、建築はともかく、車路やフェンスなど外構まわりの印象が良くなかった。例えばシルバーハットは簡素な住まいのスタイルを突き詰めたコンセプトの建築だから軽薄さもデザインの一部になるが、外構は洗練度の低さが見る側に伝わってしまっている。色々理由があるのだろうが、外構に関しては「ところミュージアム」の方がずっと良かった。